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『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のシャアがルフィの声になった理由

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『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のシャアがルフィの声になった理由

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ジ・オリジンのアニメ化

 一番最初の『機動戦士ガンダム』の作り直し版漫画である機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のアニメ版。2015年2月28日の劇場公開が近付いてきて、概要がだいたいわかってきた。今回の目玉はなんとなんと言っても、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の漫画の作者であり、もともとのガンダムの作画監督やいろいろの重要な役割を担った安彦良和の25年ぶりのアニメ復帰だろう。

 25年前といえば『ヴイナス戦記』である。これが安彦良和最後のアニメ監督作だった。『ヴイナス戦記』で興行収入的に滑ってしまい安彦良和はアニメーターを辞めて漫画家になる。その間に『機動戦士ガンダムF91』(91)とか『新海底軍艦』(95)のキャラデザなどは手がけるものの、アニメ制作現場に関わることはもうなかった。

 で、細々と漫画家として活動(失礼)していたわけだが、2001年に『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(以下『ジ・オリジン』)で当てる!そりゃガンダムだからしょうがない。いくら富野がヴィクトリーガンダムとかターンエーガンダムとか言っても、やっぱり安彦良和の絵のガンダムが本当のガンダムと思っているファンは多い。僕だってそう思ってしまう。だから『ジ・オリジン』はかなり夢中になって読んでいた。

 そんな『ジ・オリジン』の漫画には不満はほとんど無いけれど、それがアニメ化されるというと話は別だ。安彦良和の絵を誰がアニメにするというのか。安彦良和の絵をアニメに出来るのは安彦良和だけ!と思っていたが(『ガンダムUC』なんてのは納得がいかない)、まさかの安彦良和がアニメーター復帰。それも、総監督、キャラクターデザインとして。現場に入って絵コンテなんかバリバリ描いているらしい。公式サイトからアニメの予告編みると、妙に絵の再現度が高い。作画監督(西村博之という人。2ちゃんねるの元管理人ではない。)がかなり頑張っているなと思ったが、まさか本人が関わっていたなんて。ノーチェックだったのでひっくり返りそうになった。

 安彦良和は66歳。今回のジ・オリジンのアニメは、シャアセイラ編を4回に分けて制作することが決まっている。年に1本公開ペースでも安彦良和は70歳になってしまう。最初の4本だけでも、なんとか最後まで安彦良和に関わって欲しいものだ。ジ・オリジン全編のアニメ化となると、何年かかるのか。考えるだに恐ろしい。角川とサンライズとバンダイは長期シリーズを狙っているのだろうけど、安彦良和とか、シャア役の池田秀一(64歳)が何年生きると思っているのだろうか。

少年時代のシャアの声は田中真弓

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 今公開されている予告編には声がついている。今回のアニメはシャアの少年時代の話が中心の話だから、池田秀一がそのまま演じるわけにもいかないのでシャア(というよりキャスバル・レム・ダイクン)の声は田中真弓が担当している。これはイメージしていなかったので驚いた。田中真弓といえばクリリンの声とかルフィの声で有名だからだろう。

 ネットの感想では「シャアがルフィとかイメージ違うわ~」「なんで田中真弓やねん」とか言う人もいた。たしかに僕も驚いたけど、よくよく考えたら田中真弓がキャスティングされるのは妥当だった。

 安彦良和が監督としてとことんまで関わって、これぞ安彦アニメの決定版ともいえる作品『巨神ゴーグ』(84)を御存知だろうか。このアニメほど安彦良和の絵が完璧に再現されているTVアニメなんか無い。究極というほど高いクオリティの作画だったけど、さほど人気が出なくて、失意の安彦良和がTVアニメを卒業してしまったきっかけにもなった哀しい作品でもある。それはここではどうでもいいが、実はこのアニメの主人公のショタである田神悠宇を演じていたのが、何を隠そう田中真弓なのだ。

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 これが田中真弓演じる田神悠宇。

 ご覧いただければ何を言いたいのかお分かりいただけたかと思う。安彦にイケメンとかイケショタとか描かせればだいたい一種類くらいしか顔がないから、それにキャスケットをかぶせておけば最強の安彦ショタの出来上がり。

 ここまでくれば田中真弓をキャスティングしたくなるのが人情だろう。そう考えていくと、田中真弓が声変わりしていって、やがておっさん声になれば池田秀一の声になりそうな気にもなってくるから不思議だ。(池田秀一は子役から映画俳優をやっているので、実際の声は調べようと思えば調べられるけど)

 田中真弓をキャスティングしたのは総監督たる安彦の意見なのか、他の誰かなのは知らないけど、『巨神ゴーグ』の田神悠宇がイメージされているのは間違いない。新参者がルフィとか言って欲しくないのである。

オリジンアニメの不安点

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 戦闘シーンがすべてCGアニメなことだ。初代ガンダムにも関わった板野一郎も参加していて、すごく見応えのある動きを一部しているらしいのだけど、どうにもゲームみたいな安っぽいCGなのが悲しい。

 ガンダムといえば何と言ってもモビルスーツをはじめとしたメカのアクションが中心になってくる。『ジ・オリジン』の漫画版でも、安彦の描く重厚なモビルスーツ戦が大好評だった。それがアニメでは全く再現されないのだろうか。

 作画監督のインタビューでも「本来ならば、安彦さんのタッチを活かした映像にするならば、手描きの方がいいんです。ただ、あの物量を手描きでやるのは、スケジュール的に非常に難しい。」という、どうしょうもない話が出ている。けっきょく、安彦絵を活かしたロボアクションなど描こうとするなら、安彦良和が全盛期かつ、『めぐりあい宇宙編』くらいの予算が毎年のように出ないと無理ということかとがっかりする。

 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の今西隆志監督が起用されたのもCGに強いということからだろう。CGと安彦タッチの食い合せ。最悪といっても良いような気がする。ここが最大の不安点だ。もちろん、CGアニメといってもPixarとかディズニーくらいのレベルだったらわからないけど、それこそ現代で『めぐりあい宇宙編』や『イデオン発動篇』を作る以上に望むべくもなしだ。

 「もうちょっと安彦さんのニュアンスに近くしたいというのがあったんですが、最初なのでこんなものかなと。これから、本数を重ねればもっと良くなると思いますし」

 西村博之作画監督のコメントが胸に突き刺さる。

 まあ、しょせんアニメ。ガンダムはもともとアニメ作品だったけど、『ジ・オリジン』は漫画作品として独立した作品。あまり多くは期待しない方が良いのだろう。

奇跡の作品であるので

 もともと安彦良和がガンダムの漫画を描くというのが奇跡だった。最初はそんなもの絶対に描かないと言っていた。

 そして漫画が当たったあとも『ジ・オリジン』のアニメ化は絶対にさせないと言っていた。

 さらにアニメ現場には二度と関わらないと言っていた。

 そんな3つの奇跡を乗り越えたのが今回のアニメ化なわけなので、内容がどうあれ、安彦良和の最後のアニメ作品としてありがたく受け取ろうと考えている。

 ちなみに安彦良和の劇場監督作品は『クラッシャージョウ』『アリオン』『ヴイナス戦記』の三本だ。どれも一般的な評価は……(『クラッシャージョウ』はまあまあ人気。単品DVDすら発売されて無いけど…)。


DVD時代以降、まともなソフト発売が『アリオン』くらいしかない安彦劇場作品!!!

この記事を書いてからはや3年。今やAmazonプライムビデオにジ・オリジンの4作品が配信されていて無料で観れてしまう。なんてことだ。そして観た感想としては……まあ思ったとおりと申しましょうか。そして実際わりと田中真弓の声は池田秀一の声と親和性があった。池田秀一の声が老けていた。