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「アニメ一話斬り」とは?
連続アニメを一話の時点でぶった切る企画である。昨今の連続アニメはかったるいので、とても全話おっかけてられないのでこういうことを考えた。一話だけなら見たくないアニメも観れるかもしれない。
ルールとしては、それまでに何話めまで公開されてようと、一話終了の時点だけの視聴情報で判断する。私ぶたおが、もし二話以降、あるいは全話見ていたとしても、極力それ以降の展開は考慮せずに評価をくだす。そういうつもりで読んでもらいたい。「○話から面白くなるのに~」とか思われたとしても「第一話のクオリティとしてはどうだったか」という話なのであしからずである。
富野ガンダム最新作!
最後の富野ガンダム監督作である『∀ガンダム』から15年も経ったそうだ。その前のアニメ監督作の『リーンの翼』や『機動戦士Ζガンダム劇場版』から数えても10年ぶり。つまりその間はまともにアニメの仕事がなかったに等しい(『リング・オブ・ガンダム』というイベント用の作品はあった)。
富野監督が意識しているアニメの先輩宮崎駿はその間に『崖の上のポニョ』(原作・脚本・監督)『借り暮らしのアリエッティ』(企画・脚本・美術)『コクリコ坂から』(企画・脚本)『風立ちぬ』(原作・脚本・監督)その他にも短編数本と精力的にアニメを制作していたのを考えると、年齢的なことを言い訳にするにしても寂しいばかり。その辺の富野監督に対する考察は「ガンダムの富野由悠季がガンダムから逃れられない本当の理由」のほうにまとめてあるので御一読を。
僕が事前情報としては把握していたのは以下のことだけだ。それ以外は特に調べずに視聴した。
1.『機動戦士ガンダム』~『機動戦士Vガンダム』まで描かれた宇宙世紀(ユニバースセンチュリー)の遥か未来のリギルドセンチュリーが舞台。
2.タイトルのレコンギスタはレコンキスタを文字って作った造語。
3.ガンダムファンには見てほしくない。子供たちに見て欲しい作品。
4.富野が総監督を務めつつ単独で脚本を書き演出などストーリーの全権を握っているっぽい。
5.ガンダムをぶっ壊す!
1については、『∀ガンダム』でも似たようなことをやっている。続編ではあるけど新作感は出したい。前の遺産は使いたいけど自由にやりたい。この未練がましさ。思い切りの悪さが実に富野らしい。さすがガンダムに縛られし者である。
2については、間違った知識を覚える子供もいるから、紛らわしい造語を作るなと。レコンキスタ(キリスト教勢力の再征服運動)=ガンダム原作者としての再征服とかけあわせているのだろう。未練たっぷりである。
3については、本当に子供向けかどうかは見てみないとわからないけど、深夜にやっといてそれかよ!と言いたい。(ガンダムシリーズでは初の深夜アニメ)
4については、嫌な予感しかしない。
5については、はいはいまたかよ。(初めての続編である『機動戦士Ζガンダム』(1985)の頃からいつも言ってる)
謎のモビルスーツ
さて、そんな新作の『ガンダムGのレコンギスタ』第一話「謎のモビルスーツ」である。
冒頭から空中をガンダムが飛行していてそれを数機のモビルスーツが追いかけている。
ガンダムを追いかけるGMっぽいモビルスーツに載った主要人物らしきパイロットがカットインされ「坊主頭に先をとられた!?……何の発光だ?……捕まえてみせる!!」とか言っちゃっている。坊主頭とは丸い頭のモビルスーツのアダ名らしい。登場メカを正式名称ではなくアダ名で呼ぶ。キャラがみやみに独白する。もう富野節全開である。
最初からガンダムが登場するのも好印象だ。スピード感のある展開が期待できそう。
突如ガンダムのコクピットが開いて女の子がムササビの術のように空中に飛び降りる。しかも泣きながら。
ガンダムに女の子!?なぜ泣いている!?そしてなぜパラシュートではなくてムササビの術!?
とか思う間に女の子はさっきの独白してた奴のGMみたいなんにキャッチされる。
どういうことが説明されぬまま、地上と宇宙を結ぶ軌道エレベーターの中に舞台は移る。キャピタルガードとかなんという士官学校ぽい奴らの訓練をやっているらしい。
ここでようやく主人公らしき少年が出てくる。なんで最初から主人公だと思ったかといえば、OPに主人公然として出てくるというメタ情報があったからだ。どうやら優秀な生徒らしいが、どういう奴で何を目指しているとかはイマイチわからない。とりあえずこいつらが軌道エレベーターに載って宇宙に行き訓練するということしかわからん。主人公たちが訓練しているとチアリーダーの女の子が大挙として乱入してきたりしてますます混乱する。訓練といっても部活みたいにわりと軽いノリで、軍隊のように切迫した状況下ではないのかもしれない。
そうこうして物語が最初のアイキャッチくらい(つまり半分くらい)まできたあたりで、冒頭で出てきたガンダムが軌道エレベーターを人質にするといって攻めてくる。そしてガンダムに乗っているのもやはり女の子。なぜ?そしてガンダムは海賊らしい。どういうことや!?
それにしても、やたら画面に女の子ばっかり出てくるのは、昨今のアニメの流れとして仕方がないことなのか。いや、富野に権力をもたせると、登場人物の女子率が異常に跳ね上がるのは昔からだ。
後半は主人公が作業用モビルスーツに乗り込み、ガンダムに殴りかかるという展開。作業用モビルスーツに圧倒されるガンダム!ガンダムなのに弱い!盾とか簡単にへしゃげている!なんだこれ!
戦闘シーンについては、見慣れた富野演出(ロボット同士がぶつかる決めポーズで背景の色が変わるとかアレ)で安心する、と同時に圧倒的な予算不足も感じる。第一話だけど、ぜんぜん動かない。深夜アニメだからこんなもんなのか。
で、仲間の作業用ロボットと協力してガンダム捕獲に成功。ガンダムが弱いのか、この女(OPメタ情報的に解釈するとヒロイン)が、ザクに捕獲されたセイラさんなみにヘタクソなのか。この女の子もコクピットから泣きながら降りる。冒頭の展開と対になっているのか。それとも降りる時にどうしたって泣けるガンダムなのか。そのへん第一話からじゃさっぱりわかんないけど、とにかくこのGセルフという名前のガンダムは特別な機体らしい。そりゃわざわざこんなアニメを見ている人間ならば誰でも知っている。どう見ても主人公たる今回のガンダムなのだから(またメタ情報!)。
で、最後に主人公がガンダムに乗り込む。どうやら選ばれた人間しか乗れないとかの盗難防止装置みたいのがあるらしいが主人公はあっさりと受け入れられる(ありがち!)。そこで第一話は終わり。
そうそう、冒頭で泣きながらムササビの術をしていた女の子のほうは、軌道エレベーターのブリッジ的なところでガンダムの姿を見てウー!とかアー!とか言っていた。酸素欠乏症にかかってバカになったらしい。なんとなく、『機動戦士ガンダム』に出てきたララア・スンを彷彿とさせる。名前もそんな感じだったように思うが忘れてしまった。OP的に解釈すると、もう一人のヒロインかもしれない。
感想を列挙していく
OPの曲は印象に残らない。まあ、これは本編とは関係ないので良い。
ガンダムが冒頭から出てきたのは誠意を感じるようで、けっきょく何だったのか。十数分後に再登場してきたときも、それがどういうメカで、どういう立ち位置なのかさっぱり説明がなかった。十数分あれば何か説明は出来たはずだ。主人公たちの教官らしき人間は、冒頭でGMみたいなのに乗ってガンダムを追いかけていた当事者なのだ。訓練の様子とか、チアリーダーの乱入とか、その後の展開にとって必要な描写だっただろうか。いや、こんなもの、無くたって良かった。その時間を使って説明されたのは「主人公が飛び級していてみんなより年下の優等生で小生意気な人気者」ということだけ。だからどうだというのか。
『機動戦士ガンダム』だったら、第一話の半分を見ただけで、主人公のアムロというやつが「地球から離れたスペースコロニー居住者で」「機械いじりが好きな引きこもりで」「隣の家のフラウ・ボウという同級生の女の子に好かれていて」「軍が作っている秘密兵器ガンダムの開発責任者を父に持っていて」「敵軍に急襲されたコロニーで避難する途中で…」などと数多くの情報を得ることが出来た。でもGレコの主人公は何奴かさっぱりとわからない。
だいいち僕は主人公の名前すら覚えていない。感想を書く人間としてヒドイかもしれないが、正直にいいますと、僕はこの記事を書くために、Gのレコンギスタ第一話を3回も見ている。そんなに見ずに、初見の印象だけで語るのが本当だったのかもしれないが、あまりにも心にひっかかるところが無かったので不安になったのかもしれない。ガンダムでは、最初からフラウ・ボウやハロが、アムロ、アムロと連呼していたからすぐ覚えることが出来た。そういえばGのレコンギスタにも、ピンク色のハロみたいなのが出ている。しかし存在感はあまりない。ただ義務的に出ていた。
そもそも世界観からして「ガンダムの世界からずっと未来だけどぜんぜん違っている宗教的な世界」「ミノフスキー粒子とモビルスーツという概念だけは引き継いでいる」「軌道エレベーターがある」「ガンダムもある」「宇宙海賊がいる」。これしか分からない。本当にわからない。
戦争中なのか、そうでないのか、といった基本的なことすらよくわからない。主人公の目的もわからなければ、主人公が所属しているらしいキャピタルガードという組織が何をしているのかもわからない。海賊の目的もわからない。すべてがミステリーに包まれているといえば良く聞こえるが、現在進行形の物語が理解できないのでは話にならない。この記事でも「さっぱりわからない」というフレーズを何回使ったかわからないくらい使ってしまっている。
EDは動かないアニメだけどなかなか良い。登場キャラクターたちが踊っているポーズで明るい歌。そして歌詞は富野由悠季。「Gのレコンギスタ」というフレーズがたくみに盛り込まれていて耳に残るソングだ。アニメ作家としての富野由悠季よりもアニソン作詞家としての富野由悠季は大いに信用できる。今までも名作が多い。
そして予告編。ナレーションで言ってる事は要領を得ない。とにかくわかったことは、ゲルググとかカプールとか過去のモビルスーツが博物館みたいなものに保管されているのがチラッと映ること。「ガンダムファンは次回も見捨てず見てね…」という声が聞こえてきそうである。
予告ナレーションの決め台詞は「待ち遠しくても待て!!」
その通り第二話が待ち遠しい作品であるかどうか……。
一話斬り!さて判定は?
第二話以降を見たいと思う理由を探してみた。
主人公がどんな奴なのかが秘密になっている。→別に気にならない。主人公の魅力というのが、ビジュアル以外には描かれていなかったからだ。
ガンダムの能力が秘められている。→別に知りたいと思わない。第一話であまりにも情けない姿しか見てないから特に好きになれない。ガンダムというメタ情報が無ければ特別なロボットとは思わないのではないか。かといって特別なロボットではないと思っていたものが秘めたる力があったなどというところに面白味のあるストーリーになっているとも思えない。
まだ世界観がさっぱり語られていないので、世界観がわかってくると面白いのではないか。→そうかもしれないが、26分の1を使ってこの程度しか語ることがないなら、全体としても何も無いのではという予想をせずにはおれない。
前作ガンダムシリーズとの絡みが楽しみではないのか。→そんなの、ガンダムポルノじゃないか。だいたいガンダムをぶっ壊す、子供に見て欲しいといって、やっていることがそれだったらがっかりする。しかしそんなところにしか楽しみが無さそうでもある。そんな幻滅はしたくないのでますます見る気持ちが萎える。
富野ウオッチとして。→そういう楽しみはあるかとは思うが、そうでない人にとっては時間の無駄に思える。
キャラがかわいい。もしくは、エウレカセブンの絵がすきだ。→絵しか売りが無いのか!だったら安彦良和が描いているだけ、ジ・オリジンのアニメの方が意義がある。僕にとっては。
敵がわからない。→第一話で敵とかライバルとか、そういうものは少しでも出すべきでしたね。主人公も含めて気になるキャラクターがひとりもいないのは不味かったかもしれんですね。
ガンダムを含めたモビルスーツがかっこいい。→ちっともかっこよくない。でも作業用モビルスーツのメインカメラの保護ガードが降りるのだけはちょっとイイ。
一生懸命に考えたが限界だった。判定。一話で斬ります。一話斬り決定!!!時間の無駄!!!
もし最終回まで見た結果、予想に反して超絶面白かったという意見があったら、あとでまとめて見ます。もし超絶名作だったら、この第一話の的外れな感想も笑えてくるのではないだろうか。そういう意味でも意義のある記事だと思う次第。
(『ガンダムGのレコンギスタ』が初回放送時に2話まで同時放送されたとかいう事情は外しています。あくまで厳密に最初の第一話ぶんの判断です。)
余談
この額にマークのあるチアリーダーの女の子はクンタラと呼ばれる差別階級らしい。むかし食糧として喰われていた種族の末裔とかなんとかいう裏設定があるようだ。その設定や造語を富野は半年かけて考えていたらしい。子供向けアニメとかいうならば、もっと他にすることあるやろ。これが物語にどう絡むのかも謎のまま。からまないかもしれない。
あと、ガンダムの新作を作る時に、富野が最初に考えたのは、モビルスーツの中のトイレの設定とデザインだそうな。そんなことする暇があったら(以下略