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おじさん同士のBL映画『オカルト』の魅力を今さら徹底的に紹介

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おじさん同士のBL映画『オカルト』の魅力を今さら徹底的に紹介

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『オカルト』のボーイズラブ度は半端ない

もてラジでも何度もとりあげられている白石晃士監督の問題作『オカルト』である。これの半端ない魅力を、あらためてお伝えしようと思う。

物語はどこかにある観光地である妙ヶ崎の吊り橋で起きた通り魔事件を偶然収めたビデオ動画から始まる。犯人は2人を殺傷し、1人に重症を追わせた後に、崖から投身して行方不明になり、動機も理由もわからない謎の事件になってしまう。プロデューサーであり映画監督である白石晃士は、この事件に強く惹かれるものを感じて、事件の被害者などにインタビューを開始する。やがて、事件の唯一の生き残りであるネットカフェ難民の江野という男に密着取材していくうちに、超常的な現象を次々と目の当たりにすることになっていく。不可解な通り魔事件の裏側には想像を絶する世界が隠されていた。次第に江野との関係にのめり込んでいく白石だったが…。

以上が『オカルト』のストーリーだ。いつものように、物語はドキュメントタッチの手ブレカメラの映像で展開されていく。もちろん本当のことではないが、本当の事として展開していくストーリーにまさかの展開があるのが白石映画だ。

『オカルト』における主人公は監督である白石晃士本人である。この白石くんがカメラを回しつつ、被写体にコミットし続ける。後の『コワすぎ!』シリーズでも、白石晃士監督は、カメラマンの田代役として、カメラをもって出演しているが、大半のストーリーでは、ほとんど自己主張をしない。『オカルト』における白石くんは、はっきり主人公としてどんどん前に出て行くカメラマンである。ディレクターとカメラマンを兼ねているという設定だから必然的にそうなるのだろうけど、『ノロイ』でも『カルト』でも、カメラマンはほとんど透明の存在だった。『バチアタリ暴力人間』に匹敵するくらい白石監督の自作自演率の高い作品である。

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もう一人の主人公である江野くん。ネットカフェ難民をやっている。この社会のなかではいわゆるダメ人間にカテゴライズされる存在だが、別の次元によって選ばれた人間だったことが判明していく。

江野くんこと江野祥平を演じるのは宇野祥平という俳優だ。宇野はごくごく当たり前にダメ人間演技を披露してみせる。さすが白石監督が惚れ込んで本作の主演にラブコールした俳優だ。監督が、自分が惚れ込んだ役者と、映画の中でデートをする。それが美人の女優だったら夢のある話だろうか。いや、そんなのだったらなんか腹立たしい。見たくない。しかし『オカルト』は、決してかっこ良くないおじさん同士のデート。そして内容がホラー(に一応カテゴライズされるしかない)だったりする。こんなもん面白いにきまっている。

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江野くんが100円ショップでお菓子の重さを手で計ってショッピングするシーン。すさまじいダメオーラが漂う鬼気迫るシーン。大好きで何度も繰り返して観てしまう。なんでこんなキャラクター作りが出来るのかよくわからない。実際にこういう人がいたのか。実際にいそうな感じしかしない。白石くんか江野くんの友達の体験なんだろうか。伏線にもなんにもなってないシーンだけど、ここを外したら『オカルト』は楽しくない。その後の江野くんがネットカフェでカップ焼きそばを食べるシーンで、白石くんが「栄養…偏りますよね?」って心配するところは、すでに女房役としての予感が発動していることがわかる。「野菜も入ってんですよ、ほら…。まあ、キャベツですけどね…」「ちょっとだけ…ですよね」「う~ん…」っていうそのあとの流れが完璧すぎる。

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派遣先が見つかった記念に、江野くんが焼肉をおごってもらうシーン。ここは伏線になっているし、物語中でも重要なターニングポイントだ。

ビールを飲んで気が大きくなって、どんどん馴れ馴れしくなっていく江野くんの小市民ぷりが見どころだし、なんといっても後に一大BLを演じる2人が(無理矢理に)急接近する場面でもある。

「白石さん、それよりもう…敬語やめようよぉ。なんかよそよそしいでしょう?もうだからいいよ、そんなん。もうタメ口でいこうよぉ」
「あぁ…」
「どう?せめてクン付けくらいでねぇ…サンなんか無いでしょそんなん」
「……じゃあ……わかりましたじゃあ…………わかった!」
「そそそう!それいかな!ほんま」
「今後はもう、江野くんで!」
「そう、江野くんできてよ!」

どんな乙女やねん!他人ごとながらドキドキしてきた。何度観てもこのシーンも良い。良すぎる。

頭が薄くなりかけた貧相なおっさんと、ひげメガネの大柄のこの甘酸っぱいやりとり…。『カサブランカ』にも匹敵する映画史に残る名シーンといえるだろう。

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いろいろあって白石くんの事務所に住み着くようになったオバQみたいな江野くん。(単純)労働を終えて事務所に帰ってきたら、なんと白石くんが仕事しながら待っててくれていた!ここの白石くんが可愛すぎる。江野くんが奇跡の映像を撮影することを条件に、事務所で寝泊まりして良いと言われた最初の日に「終わりは絶対きますけど…それまで頑張ります」とカメラにメッセージするところ。後のことを考えると切ないシーンである。

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ホラー映画の大家である黒沢清監督も本人役で特別出演。オカルト研究家としてもっともらしくいろいろと教えてくれる。白石監督も演技上手いけど、黒沢清監督もめっちゃ上手い。監督ってのは演技が上手いものなのか!

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自爆殺戮渋谷交差点ーー。

物語は、おじさん同士のBLというほのぼのした要素とは裏腹に、恐るべきクライマックスに向かって突き進んでいく。そして被写体と撮影者という境界線をどんどん踏み越えていく白石監督。

地獄だぞおじさん

『オカルト』最大の名シーンであり数多くのファンを生み出した「地獄だぞおじさん」の登場するシーン。そこの魅力をあますところなく解説したい。

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「自爆殺戮渋谷交差点」の儀式のために、爆弾の材料の買い出しをする江野くんと白石くん。

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「俺らのやろうとしてることって重いことやんかあ。なんかそれ背負ってる感じするわ…」などと言いつつ歩いている2人だが…。突然、空き缶の転がるような音が、響きわたる!

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カメラがパンすると、さっきまで誰もいなかった路地に、いきなり変な人が出現している!しかももうすぐそこに!

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変なおじさんは江野くんに近づいてこう言い放つ!

「地獄だぞ!」

そして江野くんを「基地外」呼ばわり。そらそうだけど……。

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地獄だぞおじさんは、タオルの先にコンビニ袋に入ったパンを結びつけた手製の武器を自在に振り回し、江野くんをさんざんに打ちのめす。地獄だぞおじさんの目的は、江野くんが集めた爆弾の材料のようだ。人知れぬ路地で、唐突に始まった、基地外なおじさんと負け犬おじさんの最終戦争(ハルマゲドン)。

どちらが勝つのか。そして人類の未来は。

ここまでの最終戦争に至るまでの疾走感たるや。感動して何度も見てしまう。あまりにも無駄がない。

地獄だぞおじさんは、『ノロイ』における堀光男とならぶ異端のヒーローである。白石映画によく出てくる無力な能力者のひとりでもある。独特の珍妙な武器もあいまって、観客の心に残りすぎるキャラクターだ。

映画史に残る衝撃シーン!

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最終的に物語は21年後に飛ぶ。

この映画を20年後に見ると感動はやや薄れるのだろうか。公開された2008年からあきらかに未来の世界に、カメラが平然と突入してしまう衝撃。ドキュメンタリーなんだぞこれは。とんでもないタブー破りである。しかもSFXとかCGとか使っているわけでもなくて、同じ焼肉屋の店内で、後ろのメニューを「バイオ鶏サワー(なんなんだ!?)」「バイオ桃サワー」「ルイボスハイ」に張り替えているだけという画期的アイデアである。「いやーここはぜんぜん変わってないですねー」というダメ押しつき。

焼肉屋にこんな伏線があったとは……。

白石監督を心底天才だと思った瞬間であった。ぜひ皆様にもこの名作『オカルト』を最後まで見てもらいたい。

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てっちゃんの地獄だぞおじさん化が止まらない!?

side:B
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