金城鮮魚店は栄町の市場のなかにある。栄町は那覇にあって、観光客が集まる国際通りからもそんなに遠くない。那覇空港から伸びている”ゆいレール”の安里駅の周辺なので、アクセスとしては抜群だ。ここらは夜になると地元民や観光客が入り交じる飲み屋街になるのだ。昔はエッチな店があつまる場所だったらしい。今でもすこしあるけど。
栄町市場を歩くてっちゃん。どこか馴染みのある雰囲気。大阪の天満を歩いているようでもある。そこかしこに椅子やテーブルが並べられてみんな酒を飲みだす。こうなると楽しくならないわけがない。
金城鮮魚店は小さい鮮魚店だ。一見すると魚屋さんにすら見えないかも。そんな店が、夜になると狭いスペースを工夫して飲む場所を作ってくれる。人気店なのでこの正面の席を確保するのは難しい。この日は常連がいなくなった隙間をついて割り込むことが出来た。混んでいる時は、椅子やテーブルを出してくれるそうだが、初めて訪れる人間にとっては分かりようもない。というか、見た目が完全に何かの商店なので、ここに座って飲めるかどうかさえ、ぱっと見ではよくわからない。ハードルが高い。
並べられているのはおつまみなのだろうか。聞いてみたら値段は100円とか150円とか。安すぎるだろ。現金と引き換えにいろいろ貰ってみることにした。飲み物はビールが売り切れ(!)で泡盛しかないようだ。水割りにしてもらって飲む。泡盛の水割りは200円だったか。とにかく、もうぜんぶ安い。
タコとハマチのお造りと島らっきょう。島らっきょうというのはあまり食べた経験が無かった。安いのに、トレーにたっぷりと入っていて、かなりの食べごたえある。ほのかな刺激があって泡盛の水割りとの組み合わせとしては悪くない。お刺身ともよくあうようだ。
てっちゃんと御機嫌で飲んでいたら常連さんが隣のべんり屋の餃子を差し入れてくれた。しかも泡盛のボトルも飲み残したからあげると。何という嬉しさだろう。
イカの揚げたやつも美味くて安い。スーパーでお惣菜を買って飲むようなのと同じだ。鮮魚店の店先で飲んでるのだからそりゃそうなんだろうけど、それにしたって水商売的なノリの無さがとても新鮮で嬉しい。
柿の種とよくわからないキビチョコ。こんなものですら美味しい。いや、すごく美味しい気がする。特別に美味しい。聞いてみたら北海道のおみやげなんだとか。いっぱいあるから並べてみたとのこと。沖縄で北海道のお菓子に舌鼓をうちつつ泡盛をいただく。楽しいことじゃないか。
ここらのお店は、市場のトイレを共同で使っている。おしっこがしたくなってトイレにいってみたら、小便器の窓があいていて謎のメッセージが。
りょ、了解。
泡盛も飲みまくって、ずいぶんと食べて、ぜんぶで二千円も払っただろうか。差し入れもいろいろと貰ってしまった。なんだか申し訳ないような、でも素直に嬉しい。こんな良い店があったなんて。てっちゃんも僕も、二人とも初めて。
ちなみに、金城鮮魚店には、いかのおすしは無い。
また絶対に飲みにこようと誓った二人であった。
<追記>その後、2回くらい行っただろうか。それからしばらくして突然このお店は無くなってしまった。理由はまったくわからない。