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『ハイスコアガール』問題に横槍を入れる勘違い専門家

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このサイトでも度々とりあげてきた注目の『ハイスコアガール』著作権問題。

詳しくは、

ハイスコアガールにSNKプレイモアがキビシイ理由
//moteradi.com/hsg

ディズニーで考える『ハイスコアガール』問題
//moteradi.com/hsg02

コチラを読んでみて欲しい。概要を詳しく説明している。

これに関して事件的な動きはまだみられないのだけど、知財権の専門家が声明を発表したことで(少しだけ)話題になっているようだ。

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SNKプレイモアは国家権力を悪用している?

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明治大学知的財産法政策研究所が本件に関してぶち上げた声明文を引用してみよう。元はpdfなのでちょっと読みづらい。なんでこの手の人はpdfにしたがるのか。

引用元pdf
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/20141222seimei.pdf

月刊ビッグガンガンに掲載された漫画作品「ハイスコアガール」内でのゲームのキャラクターの利用について、著作権法違反を理由とする刑事告訴が行われ、家宅捜索や出版社の担当者・役員、漫画の著作者についての書類送検が行われている。

出版社は、家宅捜索後「ハイスコアガール」の回収・販売停止・一時休載の措置をとるとともに、著作権侵害の事実がないことの確認を求め債務不存在確認の民事訴訟が提起されている状況にある。

以下の理由から、本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、刑事手続が進められることに反対する。

刑事手続・民事裁判で問題となっている「ハイスコアガール」内でのゲームのキャラクターの利用態様については、著作権侵害の要件としての類似性が認められない可能性、また適法な引用(著作権法 32条)に該当する可能性等があり、著作権侵害が明確に肯定されるべき事案とは言い難い。

著作権を巡る紛争では侵害の成否が「微妙」な事案が少なくない。民事裁判においても第一審、第二審、上告審とで侵害の成否の判断が分かれることがしばしばある。過去の刑事事件においても「微妙」な事案につき公訴が提起され、最終的に無罪とする判決が確定した裁判例がある(仙台高判平成 14 年 7月9日判時1813号150頁〔ファービー人形〕、最決平成23年12月19日刑集65巻9号1380頁〔Winny〕) 。

著作権侵害に係る刑事罰・刑事手続は、典型的な海賊版の事案等、明らかな著作権侵害行為が行われている事案であり、かつ民事訴訟では十分な権利行使ができない状況においては、実効性の点で重要な意義を有するものである。

しかし本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、強制捜査や公訴の提起等の刑事手続が進められることは、今後の漫画・アニメ・ゲーム・小説・映画等あらゆる表現活動に対して重大な委縮効果をもたらし、憲法の保障する表現の自由に抵触し、著作権法の目的である文化の発展を阻害することとなりかねない。従って、著作権侵害に係る刑事手続の運用、刑事罰の適用に対しては謙抑的、慎重であることが強く求められる。

以上のことから、本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、刑事手続が進められることに反対する。

簡単に言うなれば「引用か著作権侵害かは民事裁判で争われるべき微妙な問題なのに、判決前に警察が踏み込むとか何事か!そんなことがまかり通るならば表現の自由が侵害されるしマンガもおちおち描けない世の中になるよ!」というわけだ。

「マンガの表現の自由」というところがひっかかったのだろう。漫画家で影響力のある赤松健などもこれに賛同したことで、知財権専門家たちの主張にさらに泊がついた形になった。

たしかに国家権力による一方的な処置は怖い。そして表現の自由が保証されているとは言いがたいのが今のニッポンの現状。ただでさえマンガもガチガチに規制されるようになって面白くなくなってきているというのに、それをさらに萎縮させるようなことがあってはいけない。許せない。警察の力を借りてスクエニを恫喝するSNKプレイモアは何様やねん!?

ってそうなのか?そうか?

僕も警察の横暴は嫌いだし今のニッポンは行き過ぎているようには思うけれど、今回の事件については、いくら考えてもそういう怖い話とは結びついていかないのだが。

事実誤認があるのか事情を知らないのか

この声明文には「出版社は、家宅捜索後「ハイスコアガール」の回収・販売停止・一時休載の措置をとるとともに」との記述がある。

そうなのだ。実は問題はそこだ。

警察の家宅捜索がなければスクエニは『ハイスコアガール』の連載停止もしなかったし回収なんかもしなかったのだ。裁判で決まってもいないのだから停止する理由が無いとスクエニは言い張るかもしれない。このままいくとアニメ化企画も強行していたおそれがある。そうなれば著作権侵害が事実であった場合の被害が拡大するということを意味する。

今回の事件での警察の介入は引用か著作権侵害かの問題に関わっているのではなくて「アニメ化をきっかけに無断使用を知ったSNKプレイモアから物言いが入ったにもかかわらず、販売停止や一時休載処置もとらず話し合いにも応じようとしなかったスクエニの傲慢な態度」(SNKプレイモアの主張による)についての介入だ。

著作権侵害か引用かとの判断でいうと、限りなく黒に近い今回の事件だけど、そこについて警察が介入して著作権侵害であると断定したわけではない。事件の経緯の報道を信じるなら、SNKプレイモア側からの民事の話し合いの土俵にものってこない態度について完全に黒だと断定しただけだ。

知財権の専門家としては「権利者から物言いが入ったにもかかわらず強硬な態度をとる」といったヤクザ的なやり方は「法治国家としては想定外」なのかもしれない。しかし人間というのは教科書通りに動いているわけではない。時としては机上でしかものを考えないインテリには想像もつかない理不尽な事が起きるし、信じられないようなバカな振る舞いをする組織もいる。

そもそも警察にとっては今回の件についてSNKプレイモアに肩入れする理由が全くない。政治的なメリットも特に無い。著作権侵害疑惑で警察の家宅捜索が入るというのは、知財権の専門家が声明を出すくらい異常なことであるのはわかる。僕もあまり聞いたことがない。とするとそこに権力よる示威行為であるとか裏工作を邪推したくなる気持ちはわかる。しかし報道を少し読みこめば「スクエニの態度があまりにも常軌を逸したものだったからこうなった」という可能性だって充分に伝わってくる。むしろそう考えた方が自然なのだが。

もしかしたら知財権の専門家達は報道で伝えられている以上の事実を知っているのだろうか。

現時点ではとてもそうは思えない。そうであるなら声明文にそのような情報を書くはずだ。我々と同じレベルで報道で知ってモノを言っているレベルに見受けられる。

まさかスクエニのような大企業がずさんな対応をとる筈がないという思い込みから警察による表現の侵害だと解釈しているのだろうか。そうだとしたらずいぶんと分析が甘いことだ。

うっかり尻馬に乗った赤松健も不用意である。

表現の萎縮がにつながる?

今回の件でSNKプレイモアの訴えが通ることでマンガ表現に何か萎縮が起きるのだろうか。

SNKプレイモアは以前の記事でも書いた通り同人活動などを妨げたりした事実は無い。それどころか自社のキャラについての使用許可については緩やかな方だ。

例えばアニメ版の『氷菓』を制作する際にSNKプレイモアに許可を申し入れて、原作小説ではカプコンキャラのコスプレをするシーンをSNKキャラに差し替えてアニメ化とマンガ化したなんて事例もある。カプコンよりも許可が緩かったためと言われている。

スクエニは自社がゲーム著作物を扱うメーカーのくせに、他者の著作物にはぞんざいな態度をとり、カプコンとバンダイナムコ以外のゲームメーカーを軽視した。このことがSNKプレイモアの逆鱗に触れたわけだし、警察介入というところまで発展した原因になっているのは繰り返し述べた。なおかつ事件が大きくなってからなお民事で逆裁判を仕掛けたのもスクエニだ。

スクエニは著作権というものを拡大解釈して無断使用した。これは紛れもない事実。

それに対して意義を申し立てることのどこにマンガ表現の萎縮という要素があるのか。

著作権侵害か引用については警察は不介入であくまで民事で争う。それまでは何一つ文句を言われる筋合いは無い。販売も継続する。

こういうのがマンガ文化や表現の自由にとって何かプラスになるというのか?

他人の著作物の二次使用での表現がある程度保証(あくまでお目こぼしではあるけど)されている場としては同人活動やコミケ市場がある。これについてSNKプレイモアは破壊活動はしていない。

それで充分では無いのか?

なぜスクエニのような大企業にまで同人活動的な表現の権利を与えなければならないのか。知財権の専門家たちが守ろうとしているものは一体なんなのか。

甚だ疑問に思った声明文だった。