加古川に「かつめし」を食べに行ってきた
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日本3大デミグラスかつライス料理というのがある。根室のエスカロップ。岡山のドミカツ丼。そして加古川のかつめしだ。
そのなかでもっとも大阪人に馴染みのあるのは加古川のかつめしだろう。なにしろ大阪の隣の兵庫県の市の郷土料理だ。なのに3大デミグラスかつライス料理の中で僕は唯一食べていないのがかつめしだった。人は近いからといって行くわけでもないのだ。思えばかつめしを疎かにする人生だった。
かつめしの由来はわりにはっきりしている。1953年にいろは食堂(今はもう無い)という店がかつめしを作ったそうだ。それから付近の店に広まった。広まったのは美味いからに違いないけど、加古川市付近限定でしか広まってないのは、訴求力がさほどでもなかったせいか。なんにしても食べてみないとわからないのだ。
というわけで8月のある日にJRに乗って加古川に出かけてみた。JR加古川までは運賃がかなりかかる。京橋からだと片道で1320円もかかる。近いけど遠い理由のひとつだ。日本はもっと電車賃を安くするべきだが、そう言っても仕方ないので今回も18切符の出番である。
加古川に降り立つ。8月なので日差しが暑い。あまりに暑いとカツ料理を食べる気も失せてしまいかねないので、できるだけ歩かずに済ませたいところだ。駅周辺にもかつめしを出す店はいっぱいある。かつめしマップなるものもあるくらいだ。さまざまに検討した結果、駅から少し歩いたところにある、ニッケパークタウンというショッピングモールに入っているお店でかつめしを所望することにした。ショッピングモールの店なら気楽に楽しめそうだ。
ニッケパークタウン内フードコートはこじんまりとしたものだった。ショッピングエリアとは別棟のようになっている。昼下がりなので人も少ない。
フードコートというと、決まりきったチェーン店が看板を連ねがちであるけど、ニッケパークタウンの場合はなかなか独自色が強い。入ったところにあるうどん屋からしてあまりよく知らない店。かつめしの店が入っているくらいだから、地元カラーのフードコートなのだろう。なかなか良い。
目当てのキッチンはよしは一番奥の角にあった。手前にはにくてん(兵庫県の独自のお好み焼きの一種)を出すはよしという店があって紛らわしい。たぶん同じ人が経営しているのだろうとは思うが。
入り口の説明の看板に「かつめしとは、トンカツか牛カツを御飯の上に載せた料理である」と説明があったので、お店の老主人に「かつめし、豚のやつで下さい」と言ったら、何を言っているのだという顔をされたので、もう一度ゆっくりと「豚のやつで下さい」と伝える。すると主人の答えは意外なものであって「うちは豚しかありませんよ」というものだった。豚のやつが食べたかったのでそれで良いのだが釈然としない気持ちになった。しかし食べれればそれで良いわけで、番号札を持ってテーブルで待つ。この時間にその店で注文しているのは僕だけだった。
ついに念願のかつめしと対面する。見た目はカツカレーっぽいのだが、かかっているのはデミグラスソース。かつは薄めにカリッと揚がっていて、他のデミグラスかつライスのエスカロップやドミカツ丼も薄めのカツが多かったので、デミグラスソースに合わせるならば、薄めが良いのかもしれないと思う。味のほうは美味いのは間違いないわけだが、説明するならばスパイシーで攻撃的なところもあるカツカレーに比べて、ずいぶんと慈愛に満ちたやさしい味である。エスカロップよりもシンプルで、ドミカツ丼との違いは洋食テイストにある。
加古川だからなのかよくわからないが、フードコートの水がやけに美味い。しかしここで手を洗う不届き者が多いようだ。このような張り紙ははじめて見た気がする。たしかにメシを食っていたらつい洗いたくなる気持ちもわからんでもないが、おてふきもあるのに何故…。
かつめしに満足してフードコートを出ようとした時に、入り口のうどん屋にカレーうどんライスというコロンブスの卵的なメニューを見つける。美味いに決まっているが、さすがに満腹度が強いので試すことができない。できれば、にくてんも食べたかったが(ここのにくてんもたいへん美味しいと聞いた)、これもまた次の機会への心残りとしてとっておく。
駅への帰り道に大変立派な喫茶店エデンがあって、ここでもかつめし(カツライスと呼ぶらしい)を出しているとのこと。心惹かれまくったが、やはりかつめしを連続で喰うのは気が引けたので次回への心残りとしておく。昔なら胃袋に無理にでも押し込めたのだけど、最近は妙に自制心が働くようになってしまった。つまらないのかなんなのか。
でも心残りのある旅は楽しいからこれで良いのだ。
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