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『まんが道』完全読解(1)

『まんが道』完全読解(1)

 藤子不二雄の半自伝記であり、藤子不二雄Aの代表作であり、多くのまんが家のバイブルとなる『まんが道』。今更ではあるがそれの魅力をあますところなくお伝えしたいと考えた。何回かに分けて書いていこうと思うが、なにしろ長編漫画であるから、いったい何回になるかは不明だ。『愛…しりそめし頃に…』まで含めればどれだけになるか想像もつかない。よければ気長にお付き合いいただきたい。

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プロローグ・満賀道雄

 『まんが道』の主人公は満賀道雄という。藤子不二雄Aこと、安孫子素雄をモデルとした人物である。満賀道雄(まがみちお)とは「まんがみち」をもじった名前だ。なぜいかにも安直なこんな別名がつけられているかというと、『まんが道』の半自伝的物語である所以でもあるが、最初はカッチリした自伝マンガを描くというつもりは無かったからだろう。

 そもそも『まんが道』は週刊少年チャンピオン誌の漫画の描き方コーナーに掲載された2ページの簡単な漫画だった。漫画家を目指す少年の漫画を載せるにあたって、自分たちのことをモデルにした話の方がリアリティもあるし、面白かろうと、その程度の軽い動機だったと推測する。

 描き始めた頃は、『まんが道』という作品がトキワ荘時代までのストーリーを含んで、40年間にわたる大長編になるなんて考えてもしなかったのだ。事実、このチャンピオン誌版は、藤子不二雄の二人が手塚治虫に会いに行くところで終了している。最初のチャンピオン掲載分は、後の単行本で『まんが道 あすなろ編』としてまとめられているので注意してもらいたい。画のタッチがまるで違うのですぐにわかる。

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 満賀道雄の初登場のコマ。得体のしれない迫力がある。あきらかに魔太郎などと同質のキャラクターとして設定されている。魔太郎などの禍々しいいじめられっ子キャラは、藤子不二雄Aの内面の一部を投影したキャラクターであるから正しいあり方であるかもしれない。栗のようなトンガリ頭は、最初のあすなろ編のみの特徴だ。藤子不二雄Aの1コマでキャラを立たせる技術は見事という他にない。

 『まんが道 あすなろ編』は1970年から1972年にチャンピオン誌で掲載されているが、『魔太郎がくる!!』の同誌での連載開始は1972年から。1968年には『笑ゥせぇるすまん』(『黒ィせえるすまん』)、69年には『黒ベエ』(個人的には藤子不二雄Aの最高傑作のひとつだと考える作品。)が発表されている。名作が目白押しの時期に執筆されている。藤子不二雄Aの全盛期にあたるだけに、あすなろ編の筆の力は特筆すべきところがある。『まんが道』の史料性とか、自伝的作品的な価値を完全にのぞいて、ひとつの漫画作品としての完成度でいえば、あすなろ編が最高とも言える。「藤子F不二雄に対して、藤子不二雄Aの何がスゴイの?」とのたまう輩にまず読ませるべきは、あすなろ編を含めた60年代後半から70年代にかけての作品だろう。

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 彼が好きな漫画の中に手塚治虫作品が入っていないことに注目。彼が好きなマンガといえば『のらくろ』『正チャンの冒険』『冒険ダン吉』『ノンキナトウサン』『コグマノコロスケ』『カバサン』などの戦前のマンガだ。手塚治虫はデビューもしていない時期であるから当然といえば当然だ。時代考証はわりといい加減なところもある『まんが道』でも、このあたりのことは流石にきっちりしている。後にトキワ荘時代に満賀道雄と出会う新漫画党のメンバーである永田竹丸と森安なおやは『のらくろ』の田河水泡の弟子であるし、つのだじろうは『冒険ダン吉』の島田啓三の弟子にあたる。また、『コグマノコロスケ』『カバサン』の芳賀まさおは、トキワ荘勢で自宅を訪問するシーンがあり満賀道雄たちと対面している。ちなみに、永田竹丸は後に芳賀まさおの娘と結婚した。

 満賀道雄(藤子不二雄)たちも、世代的にこれら戦前の漫画家たちからの影響を多大に受けているはずだが、意外なことに、コレ以降に、手塚治虫以外の作家の漫画を読んでいるようなところが具体的に語られることはほとんどない。全く無いといっても差し支えないほどである。これはどうしたことか。ページの都合や構成上の問題もあるかと思うが、藤子不二雄を漫画家にした最大の動機である手塚治虫との関係を強調するためというのが最大の理由だろう。藤子不二雄のまんが道における導き手である手塚治虫は、あくまでも唯一神でなければならないからだ。手塚治虫が時代を代表する人気漫画家としての立場から、まんがの神様にまで祀り上げられたのは、まんがの新約聖書『まんが道』の影響が非常に強いと言われるが、それにはそれだけの理由があるのだ。

 かように、不自然なほど手塚治虫以外との漫画のかかわりについて全く語られない『まんが道』において、満賀道雄の唯一の漫画読書経歴が伺えるコマになっているのだから案外重要なところだ。満賀道雄たちが少年時代に読んで影響を受けた漫画のエピソードとしては、アメリカの漫画家のソール・スタインバーグ(作中ではスタインベルグと表記)が挙げられるだけである。海外の漫画は別枠という事かもしれない。

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 『まんが道』という漫画には、膨大な数のその場限りの使い捨てキャラが登場するが、記念すべき最初の使い捨てキャラが、いじめっ子のショーキだ。鍾馗とは中々に渋いニックネームだ。今の子供は鍾馗様なんか知らないだろう。満賀道雄の立ち位置として「漫画の腕前を認められてはいるが基本的にはいじめられっ子」であるという事を説明するためだけに登場したキャラである。しかしこのショーキが第一話でなかなか良い演技を披露してくれるのである。

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 藤子不二雄Aの地元である富山県の氷見から、空襲によって炎に包まれる富山最大の都市である高岡市を眺める子供たち。『まんが道』の物語は戦時中から始まるのだ。子供の中では圧倒的な暴力によって権力をもったショーキも、アメリカ軍というさらに絶対的な暴力の前ではなすすべがないのだ。

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 滑稽なまでに取り乱すいじめっ子に戸惑いつつも、無言で共感の涙を流す満賀道雄。さりげないコマで見事なまでにエモーショナルな部分を表現した『まんが道』でも屈指の名シーン。藤子不二雄Aにこうしたものを描かせると右に出るものはいない。(そしてショーキの出番はここまで)

 そして終戦を迎えたところからプロローグが終わり本編に入る。生涯の相棒である、藤子F不二雄こと藤本弘と出会うのだ。

つづく。


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